前世

2006年に私が出版した「スピリチュアルリーディング 幸せを引き寄せる魂のビジョン」より抜粋したものです。

私の前世を見てもらったときのエピソードと、私がクライアントの前世を見たときのエピソードです。

以前、「リーディングができる」という人に、私の前世というものを見てもらったことがあります。

がらんとした広い部屋で、机ひとつとソファが対面式に置いてあるだけでした。
机に座っている男性は私よりいくつか年上のようです。
自信ありげな雰囲気をもっている方でした。

まず、前世を見る前に、仕事や家庭環境、現在の悩みなどを聞かれました。
そのあと、「何で前世が知りたいの?いくつ前の前世が知りたいの?」と質問を受けたので、
「まだ前世というものを見てもらったことがないので、この機会にぜひと思いまして。現世のひとつ前の前世でいいです」と答えました。

この方も私と同じように目を閉じて椅子にもたれます。
数分後「かなり昔ですね。平安時代ごろかな。その当時あなたは娼婦でした。
女性はたいてい、一度は娼婦になっているんですよ。その当時は結婚ができずにいたので、現世では家庭というものをもちたくて、結婚をし、子供をもうけたわけですね」

正直言って、ひとつもピンときませんでした。誰にでも当てはまる話としか思えません。たったこれだけの情報にしては、ずいぶん高額の料金を取られました。

意地が悪い私は相談後に、じつは自分もリーディングができるということをお伝えし、男性の戸惑いを冷静な気持ちで眺めていました。

そして正直に自分のことを話しました。「私は前世が見えません。守護霊なのか、ご先祖なのか、見える人がどういう関係の人か見抜けません」とお伝えしましたら、その方は「それが前世なのか守護霊なのか、わからなくていいのです。見えるものをそのまま伝えることがリーディングというものでしょう。前世を見るときにその映像が見えるのなら、前世のビジョンですよ」と教えて下さったのですが、心の底では、それは違うと答えていました。

私が「前世を見る」つもりで目をつぶったとします。このときの解釈は、とても難しいです。質問があまりにも抽象的すぎて、見ているビジョンが何を意味しているのか、全く分からないからです。しかし、前世のカルマが現世に関係している人は、このカルマがはっきりした主張をしてきますので、前世のことがわかるのです。

例えばこんな女性クライアントがいました。

明らかに前世のカルマが現世までつながっているのだと思えました。リーディングで目をつぶると、髪が肩まで長い男性が見えてきました。歳は30歳くらいでしょうか。
無言のまま私の方を見ていました。「守護霊のようなものかしら?」そんな疑問を抱きながら見続けていると、その男性の周りに何人もの霊が増えていきました。

その人たちは、私に言葉を投げかけてきます。
「お金を『貸す、貸す』といっておきながら、ちっとも貸してくれないのよ」
「その人はお金持ちで、『たくさんのお金をもっているから、困ったらいつでも相談してくれ』っていうから、お金を少し都合してもらおうと行ったけど、お金を出してくれなかったんだ」
「そうやって、何人もの人がお金を都合してほしいと集まってきたものだから、とうとう夜逃げのようにしていなくなってしまった。私たちは、ずっとこの人を探していたんだよ」
「やっと見つけた。どうしていなくなったんだ、金を貸してくれってみんな探していたんだ」
などと口々に話します。

本人は黙ったままです。でも、心の中でつぶやきます。
「ほかのやつらの転生より早く生まれ変わって逃げ切ろうとしたのに、今でもこうして追いかけられるとは、計算違いだった」と。

普通なら、きちんと魂の脱皮を繰り返して現世を忘れ、新たな修行に旅立つはずなのに、この人はずっと逃げているから、前世のカルマが切れないで、現世まで引きずってきてしまったようです。

さて、リーディングによってこんなやり取りを聞いて、初めてこのクライアントが前世でのかるまを背負って生まれてきたのだとわかります。
ご本人は、自分にとって都合の悪いことは何も語ってくれないことがありますから、周りの被害者が一所懸命に訴えてくれるのです。

この時も目の前のクライアントの前世についてお話をしても、本人はなかなかピンときませんでした。
でも、「買い物依存症になったのは、こういう背景や事件があったからです。お金をもって逃げて、人のために使うことができず、人助けもできずに前世を終えてきたために、現世になって、その人たちがアリのようにあなたの腕に這い上がり、金を貸してと群がっています。そして無性にお金が使いたくなるといった症状になったようです」と事細かく説明しますと、「そういえば」という話になって、ようやく本人から思い当たることを聞くに至りました。

つまり、こういう説明があって初めて、前世の自分がわかり、知る必要性もわかるのですが、普通は魂の方でわすれているのですから、わざわざ忘れた過去を現世になって知る必要性はないと思います。

Posted by Meatel